株式会社セントラルメディエンス(本社:東京都港区、代表取締役:中川隆太郎)の提携医療機関である、医療法人総心会 長岡京病院(所在地:京都府長岡京市、理事長:村上耕一郎)らが、福岡工業大学 情報工学部 情報システム工学科(所在地:福岡県福岡市)の福岡達士教授のチームとともに、当院独自の「直腸膣瘻」に対する手術経験を学習させたAI(人工知能)による画像認識技術を用いた手術指導ツールを作成し、稼働させるパイロットスタディについてまとめた研究論文が、国際学術誌「IJCARS: International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery」に掲載されました。

本件は、希少疾患であるため知られていない治療法をAIで共有できるようにする手法であり、全国での医療均てん化を図るためのツールとして期待されます。本研究では、直腸膣瘻に対する当院独自の低侵襲手術をリアルタイム会陰体描出で修練医に効率よく伝達する手法、成果について報告しています。
【研究の背景】
直腸膣瘻とは
直腸膣瘻は、経膣分娩時に生じた会陰裂傷により、深部の結合組織「会陰体」が損傷することにより、膣と直腸の隔壁が消失、腸内圧によって直腸と膣が穿通、慢性化すると瘻孔形成に至る、極めて稀な産科合併症です。
この状態では、膣からのガスや便の漏出、慢性的な膣の細菌感染、肛門からの排便困難、性生活への支障など、患者様の生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼします。
これまでの課題
他のいくつかの希少疾患に対する外科治療と同様に、直腸膣瘻にはいまだ体系的な治療プロトコルは確立されていません。そのため、一部の医療機関では「治療不可能」と告げられたり、人工肛門など必要十分でない治療を選択されるケースもありました。この手術には難しい点がいくつかありますが、修復に用いる「会陰体」を適切に見つけることが要点であり、また経験を要します。当院の手術データをAIに学習させ、会陰体同定の経験共有ツールができないかと考えていましたが、AI学習においては多数のデータを学習させる手法が一般的であり、希少疾患では症例数が不足するという弱点がありました。
【研究の内容】
本研究では、2024年9月から2025年5月の期間に当院で治療を受けた直腸膣瘻の患者様の匿名化した手術画像を福岡工業大学のSemantic Segmentation(少ないサンプル数でも高精度の学習ができる手法)により学習させた会陰体自動指摘ツールを作成し、ツール導入前後の会陰体修復術5症例ずつの手術時間や出血量、助手と指導者の会話量などを教育成績として評価しました。その結果、出血の減少傾向と指導に関する会話量の増加を認め、教育効果が高い可能性があると判断しています。
【本研究の意義】
本研究により、この稀な病態に対して当院の行っている人工肛門を造設しない会陰体修復術を広く全国の施設に伝達できる可能性が示されました。これまで「治療不可能」と言われていた患者様にも、お住まいの地域でより専門的な外科治療によって生活の質を回復できる可能性があります。
今後、より多くの症例を用いた精度向上やより多数症例での検討により、この教育手法および治療効果の有効性を高めるべくつとめてまいります。
医療機関の皆様へ
この病態は極めて稀ですが、類似症例にご遭遇された際は、専門的な治療が可能な施設への紹介をご検討いただければ幸いです。
患者様・ご家族の皆様へ
経膣分娩後の会陰損傷でお悩みの方は、専門医療機関での相談をお勧めいたします。
掲載論文情報
論文タイトル(英語):
” Artificial Intelligence System for Anatomical Landmark Detection in Rectovaginal Fistula Repair Surgery: Technical Development and Educational Evaluation “
著者:
村上耕一郎¹、水黒知行¹、徳安達士²
¹医療法人総心会 長岡京病院 外科
²福岡工業大学 情報工学部 情報システム工学科
掲載誌:
IJCARS; International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (英国Springer Nature出版) IJCARS (2026).
Web記事はこちらからご覧いただけます
https://link.springer.com/article/10.1007/s11548-026-03658-4
掲載日:
2026年6月5日(online first、後日紙媒体も出版)
学会報告予定:
論文内容について下記国際学会でも発表予定
2026年7月3日 CARS; Computer Assisted Radiology and Surgery(名古屋大学)
【用語解説】
会陰体: 膣と肛門の間にある組織構造で、骨盤底を支える重要な解剖学的構造。
直腸膣瘻:直腸と膣の間に異常な交通路(穴)ができる状態。
本件に関するお問い合わせ先
医療法人総心会 長岡京病院
〒617-0824 京都府長岡京市天神1丁目20-10
TEL:075-955-1151
FAX:075-955-1236
担当医師:外科 村上耕一郎(むらかみ こういちろう)
Email:nagaokakyohp-mura@athena.ocn.ne.jp
【医療機関概要】
長岡京病院について
当院は、1980年の開設以降、「ひとりひとりのいのちに安心と笑顔を」という理念の下、地域に密着した医療提供をしてまいりました。風邪・インフルエンザ・日常的な外傷や肛門手術など発症頻度の高い疾患、糖尿病・生活習慣病のみならず、パーキンソン病・脊髄小脳変性症などの神経難病や生活の質に直結する脊椎外科の手術のほか、会陰裂傷後の診療にも注力して診療に当たっております。特に会陰裂傷に伴う直腸膣瘻の手術は全国で高い症例実績があり、全国各地から患者様が来院されております。
長岡京病院 直腸膣瘻特設ページ
https://www.nagaokakyo-hospital.or.jp/vaginal-fistula
〈医療法人 総心会 長岡京病院〉
所在地:京都府長岡京市天神1丁目20-10
診療科目:外科・消化器外科・肛門外科・脊椎センター・整形外科・脳神経内科・循環器内科・糖尿病内科・リハビリテーション科・放射線科
病床数:一般病床 97床




